冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 そもそも、なぜ彼が担当した事件の公判資料を閲覧しようと思ったかというと、東京地検に移動が決まった際、あそこには黒い噂があると同僚に聞かされていたからだった。

 地検のトップか、またはそれ以上の権力を持つ誰かの思惑が蠢いている、と。

 半信半疑で入庁したところ、どうやらまったくデタラメというわけでもないらしかった。

 俺より前からここで働く検事の話では、権藤検事正の捜査や取り調べは、時に強引。押収品を検察に有利な内容に改ざんしたとの噂もあるそうだ。

 しかし、上司に逆らうのが恐ろしく、証拠を見つけようとした者はいないらしい。もちろん、噂はただの噂であって実際は正当な捜査で犯人を起訴しているかもしれない。

 しかし、もしそうでない場合……間違った証拠で、間違った犯人が裁かれた可能性がある。

 そんなこと、見過ごせるはずがない。相手がたとえ東京地検のトップであっても、罪を犯した人間は等しく裁かれるべきだ。

 ……が、今はまだ彼を追及するためのカードが揃っていない。調査していることを気取られたら真実を握りつぶされる可能性があるため、従順なふりをしておくのが得策だろう。

 心の底で冷静に策を練りつつ、消灯を済ませて執務室を出た。

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