冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「……余計なお世話です。それでは仕事があるので私はこれで」
彼女たちの前をつかつかと横切り、エレベーターの方へ足を進める。村雨琴里は五時に仕事を終え、新宿へ向かう。そして面接は六時半と言っていたな。
つまり、俺もそれまでに仕事を片付けなければいけないということだ。
紅白婦人たちのおしゃべりのせいで時間を浪費してしまった……。
腕時計を一瞥したところでエレベーターが開き、俺はいつもよりいくぶん早足で執務室へ向かった。
幸いにも……という言い方は変だが、その日取り調べをした被疑者はすでに罪を認めており、自分のしたことについて隠し立てをする様子もなかった。
取り調べが終わったところで、改めて俺の口から供述内容を話し、それを傍らにいる舞鶴が聞き取ってパソコンへ入力する。
調書を作る時のこのやり方は面前口授と呼ばれ、検事になったばかりの頃は手元にメモを取ったりもしたが、今では書かなくても頭の中で文章を作れるようになった。
事件の全容を理解していれば、そう難しいことでもない。
俺の発言に間違ったところがあれば被疑者本人に訂正してもらい、最後に署名してもらえば調書は完成する。
今回は証拠も揃っているので起訴する方針だ。