冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
取り調べを終え、舞鶴とともに事務作業に勤しんでいるうち五時が近づいてきた。
俺は早々とパソコンを閉じ、舞鶴に必要な指示をして帰り支度をする。
「神馬さん、珍しくお急ぎですね。なにかご予定が?」
普段の俺はプライベートの予定で早く帰ることなど皆無に等しいから、不思議に思われても当然。しかし、今日の予定に関してはなんとも説明しがたい。
「……新宿のコンカフェに用があって」
「えっ? 神馬さんがコンカフェ!?」
口にしてから、今のは激しく誤解される発言だったと後悔する。
案の定、舞鶴は目を見開いて絶句している。
「言っておくが俺の趣味じゃない。知人……の娘が働いているらしく、心配だから様子を見てきてほしいと頼まれた」
嘘も交じっているが、状況は似たようなものである。舞鶴はホッとしたように息をついた。
「なるほど、そうでしたか。特殊な職場ですから確かに心配ですね」
「その娘のシフトに合わせなきゃならなくて急いでるんだ。悪いが、先に失礼する」
「はい。お疲れ様でした」
話していたら、すでに五時を五分ほど過ぎていた。
急いで退庁し、地下鉄で新宿を目指す。運よく座れたため、ふと思いついてスマホで例の強盗傷害事件について検索してみた。
三年前の事件とあって古いニュース記事が多いが、その中に気分の悪い見出しを見つけて、思わず胃の辺りにむかつきを覚えた。