冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「どうしてあなたがここに……?」
彼は私の問いかけには答えず、男性を冷たい目で見下ろした。
「手を離してください。うちの従業員になにかご用ですか?」
怒鳴ったわけでもないのに迫力のある神馬さんの低い声が、男性に問う。
〝うちの従業員〟って……もしかして、男性を撃退するために嘘を?
「べ、別に……っ。彼女が配っていたティッシュをもらっていただけですが?」
「そうですか。うちは従業員が安全に働ける職場をモットーにしておりますので、手を握るなどの行為は当然認めておりません。目撃した場合、カスタマーハラスメントの中でもとりわけ低俗なセクハラ行為として弁護士に相談させていただきますので、以後お気をつけください」
「な、なんだよ……。だったらこんな場所に店構えるなよな、紛らわしい」
男性はそんな捨て台詞を吐くと、逃げるように私たちの前から立ち去った。
ホッとしつつも、なぜ〝彼〟がこんな場所にいるか理解が追い付かず、おそるおそる隣に立つ長身を見上げる。
「た、助けていただきありがとうございます……」
いちおうお礼を口にすると、目が合った瞬間じろっと睨まれ心臓が縮こまった。
「……なんだその格好は」
「なんだと言われましても……お店の衣装です」
馬鹿にされているようで恥ずかしくなる。気休めにしかならないけれど、ミニスカートの裾を両手で必死に引っ張った。