冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「とにかく、俺が話をつける。きみは待っている間にその不謹慎な服装をなんとかしろ」
「わ、わかりました……」
神馬さん、〝不謹慎〟って言葉が好きだよね。検事というだけあって、見た目通りお堅い人なんだろうな。
前に食堂で彼のスマホがチラッと見えてしまったけれど、勧善懲悪ものの時代劇が好きみたいだし、遊び心のあるメニュー名も許せないくらいだもの。
……恋人になる人は大変そう。
余計なお世話だろうけどそんなことを思いつつ、彼を『プリティ☆ギルティ』の店内へと案内した。
およそ数十分後。私と神馬さんは、和風カフェの半個室で向かい合っていた。店内のインテリアには障子や竹材が多く使われ、半個室の入り口には市松模様の暖簾がかかっている。
話の内容的に本当はは個室の店を選びたかったそうだが、危険な目に遭った直後だから男性と完全にふたりきりになるのは抵抗があるだろうと、神馬さんなりに気を遣ってくれたようだ。
もっとも、私の方は検事である彼がなにかするとはまったく思っていないけれど。
とはいえ彼と話すことなどなく、気まずさをごまかすようにコーヒーカップの取っ手に指をかける。神馬さんはコーヒーに手を付けることないまま、私を真っすぐに見据えた。
食堂で文句を言われる時とは少し違う、鋭い視線に緊張感が走る。
……なんだか尋問が始まる前みたいだ。
「昼も夜も休みなく働くのは、弟さんとの生活のためと聞いた。単刀直入に聞くが、きみの父親は村雨奏二ではないか?」
思わず、鼓動が乱れた。