冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
当時の父の担当弁護士とは、今はほとんど連絡を取っていない。私と弟にはあの事件の再審請求という目標があるけれど、当時の判決を覆すだけの材料はないのが現状だ。
そもそも弁護士に仕事を依頼する経済的余裕もない。
「……弟が、弁護士を目指していますので」
挫けそうになる心を鼓舞するように、そう口にした。働きづめだろうと生活が苦しかろうと、弟の将来に賭けているから頑張れるのだ。そしていつか、父の無実を証明する。
他人の力を借りずとも、家族でなんとかしてみせる。
「学費は? 法学部はともかく、その後もロースクールへ通った方が就職には有利だが、もちろん金がかかる。きみの仕事を悪く言うわけではないが、食堂の仕事とアルバイトを掛け持ちしても、かなり苦しいんじゃ――」
「わかってます! だから焦ってるんじゃないですか、恥ずかしいコスプレまでして……」
余計なお世話だとしか思えなくて、声を荒らげてしまった。
少しでも時給がよくて、時間に融通が利いて、家族について詮索されない職場。
そんな条件で必死になりながらスマホの求人サイトを眺める私の気持ちは、国家公務員の彼には絶対にわからない。