冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
神馬さんが、父の事件を調べている? どうして……?
「今さらそんなこと言われても、信じられるわけがありません。父が有罪になったのは、担当検事が不当な取り調べで自白を強要したからだと思っています。現場にあったとされている証拠品だって、どこから手に入れたんだか」
父のことが絡むと、食堂で接する時のような普通の態度はできず、罵るような口調になってしまう。
神馬さんは少し悩んだような顔になり、眉根を寄せた。
「情けない話だが、検察という組織も一枚岩というわけではない。俺自身かすかな疑念があるから、こうしてきみに接触したんだ。解決済みの事件を独断で追っているなんて上に知られたら、ただじゃすまない。しかし、リスクを冒してでも真実を知りたいんだ。それには、きみの協力が必要だ」
どうしてそこまで?
彼が弁護士だったら信用できたのかもしれないけれど、現実には立場が真逆の検事。
昔の事件を掘り返し当時の裁判が間違いだったとわかれば、彼だけじゃなく検察全体が困るはずだ。
有罪判決ばかり追い求める彼らが、そんなメリットのないことをするとは思えない。……なにかの罠だろうか。
「お断りします。もちろんいつかは父の無実を証明してみせるつもりですが、誰かの力は借りません。身内でなんとかします」
「しかし、きみは生活費を稼ぐので精いっぱい。弟さんはまだ高校生と聞いた。再審請求をしたいと願っても、準備もままならないんじゃないか? 当時の弁護士は協力してくれているのか?」
痛いところを突かれ、言葉に詰まる。