冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「そう言ってもらえると、少し救われるよ。ついでに、婚約者のふりをすることも前向きに考えてもらえると助かるが」
先ほどの殊勝な態度はどこへやら、いつもの冷静な表情に戻った神馬さんが言う。
「そ、それとこれとは話が別です……っ」
「返事はすぐにとは言わない。しかし、悪い話ではないはずだ。同居くらいはしてもらうが部屋は別でいいし、お互いの生活に干渉するつもりもない。さっきの職場に比べたら、時給のわりに安全な仕事だ」
「安全?」
一緒に暮らすことに危険とか安全とかあるのだろうか。言葉の意味がイマイチぴんとこなくて、首を傾げる。
「ああ。俺にはさっきの男のような下心は皆無だからな」
あ、安全ってそういう意味か……。身近にいる男性は弟くらいなのなので、彼に言われるまでまったく警戒心を抱いていなかった。
私はそういう面で世間知らずなのかもしれない。
大学生活の途中までは男女関係なく親しい友人もいたけれど、父の事件以降はすっかり周りから人がいなくなってしまったし、私自身恋愛どころではなかったから。
そのまま男性と関わることなく過ごし、処女のまま現在二十四歳。結婚にはまだ早い年齢だとしても、恋愛も初体験もみんな済ませているよね……。
って、神馬さんの前でなにを考えているんだろう!
ハッと我に返ると、彼が怪訝な目で私を見ていた。