冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
翌日、東京からおよそ一時間弱電車に乗って、梓の住む町にやってきた。
都会ではないけれど田舎というわけでもなく、駅前はそれなりに店が立ち並んで賑わっている。駅から伸びる大通りを少し歩き、細い路地を曲がった先にあるビルの一階に、梓が教えてくれたピザ屋さんがあった。
ガラス戸にはかわいらしいピザのイラストがプリントされていて、その向こうではすでに到着していた梓が手を振っていた。
明るいベージュブラウンの髪は小顔が際立つひし形ボブ。たっぷりの睫毛に縁どられた大きな目。
同性の私でもかわいいなぁ……としみじみ思わされる梓の容姿は、学生時代から変わらない。当然モテるから、恋愛経験も豊富。
今は野菜が恋人と言っているから彼氏はいないけれど、相談相手には適役だ。
私も微笑んで手を振り返し、店内へ。駅から歩く間に滲んだ汗にハンカチを当てつつ、梓が待つ席へと向かった。
「ごめんね、待たせちゃった?」
「ううん、私が早すぎただけ。これ、約束のブツね」
まるで怪しい取引でもするみたいに言って、テーブルを滑らせながら梓が差し出してきたのは、保冷バッグ。
上のファスナーを開けて中を覗くと、きゅうりとトマト、それに葉物野菜が一種類入っていた。