冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「ありがとう。野菜高いからホント助かる。この葉っぱって、もしかしてパクチー?」

 すん、と鼻を鳴らすとあの独特の香りがした。

「そうそう。だいたい六月までが旬なんだけど、今年取れすぎちゃってまだ余ってて。嫌いじゃなかったよね?」
「うん。むしろ大好き~! サラダでもスープでもいいし、麺類のアクセントにもいいよね」

 あと、カオマンガイのトッピングとか。そう思いつくと同時に不機嫌そうな神馬さんの顔が思い浮かんだ。

 ……そういえば、今日は彼のことを相談しに来たんだよね。

「さすが食堂で働いてるだけあって、アイデア豊富だね。仕事は順調?」
「うん。検察庁なんかに派遣されてどうなることかと思ったけど、食堂はわりと平和」

 とりあえず軽く近況を報告し合った後、思い出したようにメニューを眺めてピザを注文する。

 定番マルゲリータと、チーズをたっぷり四種類も使ったクワトロ・フォルマッジ。それにサラダとドリンクのセットをふたり分。

 こうして梓とランチする機会は半年に一度あるかないかだけれど、必ず弓弦へのお土産を買って帰ることに決めている。今日もピザをテイクアウトしようと決めた。

「弟くんは? 相変わらずまじめに勉強してるんだ?」

 先に運ばれてきたサラダをつまみつつ、梓が聞いてくる。

「うん。すごく頑張ってる。その上私に『いいご縁がありますように』って、こんなネックレスまでプレゼントしてくれたの。お昼代削って買ったんだって」

 今日は弓弦にもらった花のネックレスをつけてきた。控えめなかわいらしさがお気に入りだ。

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