冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

『あの検事さん、せっかくいい男なのにおっかないわよねぇ』
『蓮根はあたしたちでいただいちゃいましょう』

 一連のやり取りを見ていた紅林さんと白浜さんがすぐにフォローしてくれたけれど、腹の虫は治まらなかった。

 別に意地悪でまずいものを乗せたわけではなく、カレーと蓮根の相性が最高だったから、ただそれを味わってもらいたかっただけなのに、どうしてあそこまで言われなければならないのだろう。

 ――という先月の鬱憤を晴らすため、今日は懲りずにカオマンガイを勧めてみたというわけだ。彼の反応は、前回よりさらに悪いような気がするけれど。

「あらま、意外とメニュー名まで覚えてくれてたのね」

 神馬さんの口から『蓮根シャクシャク保釈カレー』というワードが出たのを聞いて、背後に隠れていた紅林さんが、ひょこっと顔を覗かせる。

「料理の名前、実はあたしたちが考えてんのよ。派遣のわりに色々自由にやらせてくれてさ」

 続けて白浜さんも顔を出し、すっかりいつもの調子で神馬さんに話しかけた。

 彼の眉間の皺が、一本増える。

「そんなことはどうだって……いや、どう考えてもあなた方の考えたメニュー名は不謹慎だ。法の番人たる検事が注文する訳がない。売れないまま販売終了となるのが関の山だ」
「今日はもう十五食出ましたよ」

 少々嫌味っぽく、そう言ってみる。

 もちろん嘘ではない。彼と同じ検事や、その仕事を補佐する検察事務官、所用で検察庁を訪れた刑事さんなど、彼の言う〝法の番人〟たちがこぞって、メニュー名をおもしろがりながらカオマンガイを食べてくれた。

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