冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
私の得意げな報告を受け、神馬さんがやれやれという風にため息をつく。
「……どうやら東京地検の風紀が乱れているようだな。上司に伝えておこう」
「それで、結局カオマンガイはどうします?」
「食べるわけないだろ。注文は塩サバ定食だ」
美しく整っている顔をゆがめ、至極面倒くさそうに神馬さんが言う。
紅林さんがポンと私の肩を叩き、『言う通りにしましょう』と小声で言った。
仕方ない。これ以上食い下がって、ありもしない罪をでっち上げられても困るもの。
検事なんて、少しでも疑わしい人がいれば片っ端から起訴して自分の手柄にすることしか考えていないんだから……。
神馬さんがお決まりの定位置、窓に面したカウンター席に背を向けて座るのを見ながら、胸の内でそう呟く。
私が〝検事〟という職業全体に抱いている憎しみが、理不尽なものだというのは重々わかっている。
だけどやっぱり、検事なんて大嫌い。どうしてよりによって、その憎しみの対象がウジャウジャいる職場なんかに派遣されちゃったのかな――。
解凍の済んでいる塩サバを冷蔵庫から取り出しながら、ぼんやり思う。
四月にここへ派遣されるまでは、一般企業の社員食堂で働いていた。が、だいたい三年で違う職場へと派遣されるルールなので、今年の春がちょうどその期限だったというわけだ。