冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
昼休みの時間になると、神馬さんがいつものように食券を手にして、受け渡し口のカウンターへやってきた。
「ナポリタン」
いつも月曜日に食べているメニューを短く告げた彼は、いつも通りのクールな顔。
ジンちゃんなんて呼び名は似合わないなとふと思って、少しだけ笑ってしまう。
「……なんで笑う?」
「い、いえ。なんでも」
マスクをしているのに微妙な表情の変化にすぐ気づくのはさすがというか、ちょっと怖い。
こういう検事に取り調べされたら、やっていないことでもやったと言ってしまうのかな……。
「理由もなく人の顔を見て笑うのは失礼だ。ちなみに例の件は、まだ検討中か?」
「あっ。そのお話なんですけど……お返事する前に、私の友人に会っていただけませんか? 付き合いの長い友人なので、今回の件を相談したらぜひ紹介してほしいと」
「ああ、俺は構わない。いつにする? 今週末は出勤の予定があるが、来週以降なら空いている」
「わかりました。じゃ、来週以降で友人に聞いてみます」
そう言って神馬さんと目を合わせようとしたら、彼の視線がなぜか私の背後に注がれている。
不思議に思って振り向くと、紅林さんと白浜さんが揃って目を細め、私たちの様子を見つめていた。
あー……そういえば、誤解されてるんだっけ。