冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
お土産まで用意してたの……?
思わず梓の足下に置かれた荷物入れのカゴを見ると、【安定の味・霞が関まんじゅう】と印字された紙袋が入っていた。法曹関係者や官僚御用達の定番土産だ。
さすがは神馬さん、食堂メニューを選ぶ時と同じく、お土産のチョイスも冒険しないタイプらしい。
「顔がいいのと信用できるかどうかはイコールじゃないでしょ……」
「もちろんわかってるけど、世の中いいイケメンと悪いイケメンがいるなら、神馬さんは前者だと私は判断したってこと」
「そ、そう……」
あっという間に懐柔されてしまった友人の判断に不安を覚えつつ、ちらりと神馬さんを見る。目が合うと職場では一度も見たことのない笑みを向けられ、胡散臭さが倍増した。
「琴里さんも揃いましたし、そろそろ食事にしましょうか」
「そうですね」
すっかり意気投合してしまったふたりが食事会を進行する。私だけなんだか蚊帳の外だ。
「食事は予約時に頼んでありますので、飲み物だけ注文しましょう。ふたりとも、お酒は飲まれます?」
「私、電車だから飲んじゃいまーす」
「琴里さんは?」
「私はいいです、お茶とかで……」
琴里さんと呼ばれることにまだ慣れない。肩をすくめて遠慮するも、神馬さんの完璧な笑顔が崩れることはなかった。