冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
覚悟って、なにを……? ニコニコ顔をこんなに怖いと思った人は初めてだ。
こっちが探りを入れるための顔合わせだったのに、ふたを開けてみればすっかり神馬さんのペース。
梓はもう彼を信用しきっているようだし、なんのために三人でいるのかよくわからなくなってきた。
神馬さんが備え付けのボタンで店員を呼び飲み物を注文した後、引き続きテンション高めの梓が思いついたように言う。
「そうだ、琴里の恋愛遍歴とか気になりません?」
「えっ? ちょっと梓、なに言おうとしてるの?」
「それは興味深いですね。内容によっては嫉妬してしまうかもしれませんが、よかったらぜひ教えてください」
嫉妬って……もはやツッコむ気力もない。神馬さんにこれほどの演技力があるとは想定外だった。
「ふふっ、それなら大丈夫ですよ。琴里って基本鈍いからモテるのに全然自覚がなくて、告白っぽいことされてもスルーしちゃうんです。それで泣いた男子たちを何人も見てきましたから」
私がモテる? それなら梓の方だと思うのに、なにを言っているんだろう。
「と、友達づきあいは男女関係なくありましたけど、男友達と色っぽい雰囲気になったことはないです。いつも私と梓がいるところにやってきて顔を赤くしていた男子に『梓のことが好きなら頑張って!』とけしかけたことは何度もありますけど……」
大学時代を思い返しながら説明する。神馬さんはわざとらしくふむふむ頷いた。
「なるほど、無自覚な小悪魔タイプか。琴里さん、それは有罪だな」
「あははっ。出ました、検事ジョーク」
「梓……まだ酔ってないよね……?」
もしかして今日、ずっとこんな感じの会話が続くの……?
私はくらくらしながら、口の端に引きつった笑みを浮かべた。