冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「きみの学生時代の話を聞いていたら、そういえば、二十四なんて普通に恋愛して結婚を夢見る年齢だよな……と、今さら気づいた。俺のように元から恋愛や結婚に興味がない人間ならいいが、そうでなないなら酷な提案だよな。好きでもない男の婚約者として振舞うなんて」
ハンドルを握る彼の横顔には、ほんの少しだが確かに申し訳なさみたいなものがにじみ出ていた。今日は神馬さんの珍しい表情を見てばかりだけれど、これも演技なのだろうか。
「……神馬さんが珍しくまともだ」
「そういうことは心の中で思うだけにしろ」
苛立ちを隠そうともしないその言い方は、通常運転だ。
ということは、さっきの発言も嘘じゃない……? いや、彼の目的は父の事件について私から聞き出すことだから、たまには優しくして点数稼ぎでもしようと思っているのかも。
私は逆にそれを利用して、検事である神馬さんが持っている事件の情報を探ればいい。
でも、本当にうまくできるだろうか。
「お返事、もう少し考えてもいいですか……?」
「ああ。きみのタイミングで構わない」
彼の返事を最後に、車内は静かになる。口喧嘩のような言い合い以外はめっきり話すことがなくなる私たちが婚約者同士になるなんて、たとえ偽装の関係でも想像がつかない。
私はモヤモヤを抱えつつも、助手席で大人しくしていた。