冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「ねえ弓弦、これなに? 修学旅行、どうして行かない方に丸したの?」

 尋ねても、弓弦はなにも答えない。しかし、弟の行動の理由はなんとなく見当がつく。

「もしかして、お金のこと気にしてる? 大丈夫だよ。修学旅行のお金は一年生の時から積み立ててあるんだから」

 行き先は北海道なので安くはなかったが、これまできちんと学校に払ってきたから今さら遠慮する必要はない。

 それに、私自身高校生の時に行った修学旅行には友達との色々な思い出がある。たとえ今はその友人たちと疎遠でも、色褪せることのない大切な記憶だ。

 弓弦にだって、青春時代の今しかできない経験をしてほしい。

「でも……これから、大学にもっと金かかるじゃん? もちろん奨学金とか色々調べて使えるものは使おうと思うけど、毎日姉ちゃん働かして、俺だけ北海道って……心の底からは楽しめねえよ。それだったら、修学旅行行かずに積み立て払い戻してもらった方がいいと思ったんだ」

 そう話す弓弦はつらそうというより、あきらめたように笑っていてショックだった。

 家では色々我慢させてしまっている自覚はあったけれど、学校生活だけは他の子と同じように過ごしてほしいと思ってた。

 でも、派遣とアルバイトで食いつないでいる頼りない姉じゃ、弓弦の支えには全然なれてなかったんだ……。

 修学旅行に行けないのに笑っているなんて、普通の反応じゃない。

 弓弦はまだ高校生だよ? 本当は、絶対に行きたいはずなのに。

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