冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 やりきれなくて鼻の奥がツンとしたその時、ふと脳裏に神馬さんの顔が浮かんだ。

 彼の目的が何なのか、まだハッキリとはわからない。だけど、彼の提示した条件を飲んだら、弓弦はこんな我慢をしなくてよくなる。

 それに弓弦は、私が甘えられる相手を見つけることを望んでいた。

 修学旅行は我慢するのに、ネックレスを買ってまで応援してくれるくらいに姉想いの弟を安心させるには、彼に縋ってしまうのが一番の近道……。

 父の事件のことだって探れる私は弓弦を見つめた。

「うちの経済状況のことで、不安にさせてごめんね。でも、弓弦が心配することはなにもないんだよ」
「いいって強がんなくて。俺だって一応、真面目に考えて出した結論で――」
「ううん、強がってるんじゃないの。照れくさいのと、彼の職業が特殊だから言い出せなかったんだけど……実は最近プロポーズされたの。彼はとても経済力のある人で、弓弦のために学費も出してくれるって言ってる。もちろんそれ目当てで結婚する訳じゃないから、誤解はしないでほしいけど」
「えっ……? 姉ちゃん、それ、変なおっさんに騙されてるとかじゃなくて?」

 弓弦はどうやらパパ活みたいなものと勘違いしているようだ。コンカフェでバイトしようとしていた私より、危機管理能力はよっぽど高いかもしれない。

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