冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「そうだね、うん。伝えとく」
「検事ってことは司法試験の攻略法も知ってるってことだよな……。なんか俺、会うの楽しみだわ」
「もう、弓弦が結婚するんじゃないんだから。それはそうと、洗濯物取り込むの手伝ってくれる? とっくに乾いてると思うから」
「おー、了解」

 弓弦が外に出て洗濯ばさみやハンガーから外してくれた洗濯物を、私がそばから畳んでいく。

 姉弟で毎日繰り返してきたこういう家事も、弓弦は今度からひとりでやらなくちゃいけないんだ。

「時々ご飯作りに来るからね」
「え。いーよ別に。俺より旦那に作れって」

 旦那……。食堂ではいつも作ってあげているけれど、そういえば感謝された記憶はない。

「いいの。あの人好き嫌いが多くて作り甲斐がないから」
「へえ。ってか今のすげー嫁っぽい発言。マジで結婚すんだなー」
「……マジに決まってるでしょ。ほら、その靴下もちょうだい」

 ごめんね、弓弦。お姉ちゃんはあなたのためなら、嘘つきになる。

「ほい」

 ぱちんと洗濯ばさみの音がして、弓弦の大きな靴下を渡される。

 もうすぐお別れかと思うとその使い古した靴下すら抱きしめたくなるけれど、さすがに笑われると思って、まとめた洗濯物の一番上に、丁寧に畳んで置いた。

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