冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
決心が鈍らないうちにと、その日の夜に神馬さんに電話した。
自室のベッドに座り、緊張で背筋を伸ばしたままスマホを耳に当てる。
『はい』
彼は三コールで電話に出た。心の準備が整わず焦ってしまう。
「こ、こんばんは、村雨です。今お電話大丈夫ですか?」
『ああ。車になにか忘れ物でもしたか?』
「いえ、違うんです。あの……」
まさか、彼の方もこんなに早く返事をもらえるとは思っていなかったのだろう。
でも、もう決めたのだ。父と弓弦のために、私は敵の懐に入り込む。
「私、神馬さんと結婚しま――じゃなくて、結婚するフリをします!」
せっかく勇気を振り絞ったのに、言い間違えたせいで格好がつかない。ひとり恥ずかしくなっていると、スマホの向こうでフッと笑ったような息遣いが聞こえた。
『わかった。でも、ずいぶん急な心境の変化だな? もう少し考えたいと言っていたのに』
「弟が……いえ、私の覚悟が突然決まっただけです。いけませんか?」
修学旅行の件をうっかり口走りそうになったけれど、あれはデリケートな話だ。彼に教えるようなことじゃない。
『いや、急だろうとなんだろうと、承諾してくれればこっちは問題ない。そうと決まれば同居の準備を進めよう。もちろん、弟さんの生活が最優先で構わないが』
「わかりました。あと、弟が会いたいそうなので、また近いうちにお時間作ってもらえますか? 学費の件のお礼もありますし」
『そうだな。スケジュール確認して折り返す。希望の曜日はあるか? 弟さんの塾や習い事があればその曜日は避ける』