冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
しかしそれでいて、婚約指輪を選ぶときには素直に目を輝かせ、シンデレラみたいな体験をしたと言い、弓弦くんの前では隠している素顔を覗かせてお礼まで伝えてくれた。
そう喜ばれるとこっちも調子が狂って、彼女のためならなんでもしてやりたいという衝動が湧いた。
事件のことを教えてもらう対価としてではなく、もちろん同情でもない。
彼女はもっと幸せになるべきで、できることならそれを与える相手は、自分でありたい。
うまく説明できないが、指輪を選んだ日の帰り道、車内で彼女と言葉を交わしている時の俺はそんな気持ちだった。しかし――。
『……父の無罪判決』
彼女に望みを尋ねた時、返ってきたひと言がそれだった。琴里が本当の意味で幸せになるためには、あの事件を避けては通れないのだ。
だったら少しでも情報をこちらに渡してほしいと再び頼んでみたものの、応えてはもらえなかった。
彼女の中にある検察への不信感は、想像以上に大きい。そう気づくとともに、俺の胸にはやりきれない切なさが湧いた。
どうしたら、味方だと信じてもらえるだろうか……。
小さくため息をついてうなだれたその時、リビングのドアがガチャっと勢いよく開いた。