冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「悪いが、認識を改めてほしい。目の前でそんな風に肌を晒されて、男の俺が〝なんとも思わない〟ということはない」
「え、えっと……つまり、どういう……?」

 回りくどい言い方では伝わらなかったらしく、琴里が首を傾げている。そういえば、彼女の友人が学生時代の琴里について鈍感エピソードを披露していたな。

 あの時は冗談で言った〝有罪〟のひと言を、今度は本気で口にしたくなった。

 俺はため息をこぼし、じりじりと彼女に近づくと、壁に追い詰めた彼女の脇にトン、と手をつく。

 驚いたように見開かれた彼女の目が潤んでいて、心が乱される。そこに映る俺は、くすぶる熱情を隠しきれていなかった。

「次、同じ格好で俺の前に現れたら、襲う。……そう言ってる」

 実際は同意もなしに迫るつもりなんてないのに、鈍感な彼女に焦れて、つい乱暴な言葉が口から出た。

 琴里の頬がさっきよりも濃い赤に染まっていき、潤んだ瞳が揺れる。

 そういう顔が余計に男を煽るということも知らないらしい。無防備で危なっかしくて、目が離せない。

 俺が守ってやらなくてはと思うのは、単なる庇護欲か。それとも自分勝手な独占欲だろうか。

「き、気をつけ、ます」
「……わかればいい」

 スッと壁から手を離し、彼女の顔を見ずにバスルームへの方へ体の向きを変える。

 過去の事件の真相を知り琴里を救うためには、とにかくこの同居生活で琴里から信頼を得なければ始まらない。それなのに、個人的な感情を優先させ逆の行動を取ってしまった自分が情けなくて、思わずため息がこぼれた。

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