冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
彼女を怖がらせた罪悪感から、翌日は琴里を避けるようにして早めに出勤した。
午後の公判に備えて書類をチェックし、被疑者取り調べの時間になると、舞鶴とともに執務室での取り調べを行った。
闇バイトの実行犯として、世田谷区(せたがやく)でひとり暮らしをしている高齢女性から現金五〇万円をだまし取った上、女性にけがを負わせた疑いがある小早川という二十歳の男性だ。証拠は揃っていて、警察も自信があるから送検を決めたのだろう。
しかし、俺にはある疑念があった。
部屋へ来てから黙秘を貫く小早川を見ていても、単に弁護士の指示で黙っているというわけではなさそうな気がした。
「現場となった女性の自宅の庭には、下足痕が三人分。ひとつは女性が普段から履いているサンダルのもの。もうひとつは、すでに逮捕されているあなたの仲間のもの。そして最後のひとつがあなたのものと断定されたようですが……」
靴のサイズは26センチ。成人男性としては平均的と言えるし、実際彼の自宅からも同じサイズの靴が多数見つかっている。
しかし目の前で黙りこくっている小早川は、普段27センチの靴を履いている俺より身長が高いうえ、体格もいい。
個人差があるとはいえ、26センチの靴ではきついのではないかと思えてならない。