私の世界に現れた年下くん

名倉くんと一緒に帰ってから早2週間。



「川原先輩!」

「あ、名倉くん」

「移動教室ですか?」

「うん。名倉くんは体育?」

「はい、今日はバスケなんで思いっきり走ってきます!」

「ふふ、いってらっしゃい」

「行ってきます!」

体操服姿で気合十分に廊下を走っていく名倉くんを見送る。


「最近、いい感じなんじゃないの〜」

耳元で急に声がして、ビクッとした。


「そ、そんなんじゃないよ」

慌てて返すと、声の主の愛ちゃんがふふっと笑う。

「そうなの?」

「そうだよ」

「でも、一緒に帰ったの楽しかったって言ってたよね」

「いや楽しかったとは言ってない!思ってたより普通に楽しめたってだけだよ」

「ふーん、そっか。でも彼の一目惚れから始まって、廊下で会って話すくらい仲良くなったってすごいと思うけどなぁ」

「それは確かに自分でもびっくりしてるけど。…って一目惚れは愛ちゃんの想像でしょ」

「わかんないよ〜?」

「とにかく!ほんとに何にもないからね」


あの時言われた“また今度”だって、結局まだないし。

ただちょっと仲良くなった後輩ってだけ。


「それより聞いて、愛ちゃん」

「ん、何かあった?村井先輩?」

「うん、先輩。昨日の放課後にね、図書委員で図書室の受付してたら、突然来たの」

< 7 / 29 >

この作品をシェア

pagetop