君の鼓動を、もう一度
プロローグ
午後のキャンパスは春の光に包まれていた。
桜の花びらが風に舞うなか、美咲はひとりベンチに腰を下ろしていた。呼吸が浅い。
胸の奥がチクリと痛む。けれど、いつものことだと自分に言い聞かせる。
——本当は、検診に行かなきゃいけないことくらい分かってた。でも、怖かった。現実を突きつけられるのが。
「美咲、大丈夫か!?」
翔太の声が響く。気づけば、視界が揺れていた。足元がおぼつかない。
そして——意識が途切れた。
目を覚ましたのは、見慣れたはずの病室。
なのに、どこか遠い場所のように感じられる。
白い天井。点滴の音。隣にいる翔太の姿。
そして——ドアが開く音。
「……桜井美咲さん」
聞き慣れた声。
けれど、大人びた低さと静けさを帯びたその声に、心臓が跳ねた。
白衣をまとった男性が、ベッドサイドに立っていた。
「……悠斗……くん?」
「今は“担当医”として来てる。ずっと前に、君は俺に引き継がれてた。……けど、君が一度も来なかったから……」
その言葉に、美咲は息を呑んだ。知らなかった。でも、知っていたら……ちゃんと会いに行けていただろうか。
「……どうして……来なかった?」
冷静な声の奥にある、微かに揺れた感情。
その問いに、美咲は何も答えられなかった。
桜の花びらが風に舞うなか、美咲はひとりベンチに腰を下ろしていた。呼吸が浅い。
胸の奥がチクリと痛む。けれど、いつものことだと自分に言い聞かせる。
——本当は、検診に行かなきゃいけないことくらい分かってた。でも、怖かった。現実を突きつけられるのが。
「美咲、大丈夫か!?」
翔太の声が響く。気づけば、視界が揺れていた。足元がおぼつかない。
そして——意識が途切れた。
目を覚ましたのは、見慣れたはずの病室。
なのに、どこか遠い場所のように感じられる。
白い天井。点滴の音。隣にいる翔太の姿。
そして——ドアが開く音。
「……桜井美咲さん」
聞き慣れた声。
けれど、大人びた低さと静けさを帯びたその声に、心臓が跳ねた。
白衣をまとった男性が、ベッドサイドに立っていた。
「……悠斗……くん?」
「今は“担当医”として来てる。ずっと前に、君は俺に引き継がれてた。……けど、君が一度も来なかったから……」
その言葉に、美咲は息を呑んだ。知らなかった。でも、知っていたら……ちゃんと会いに行けていただろうか。
「……どうして……来なかった?」
冷静な声の奥にある、微かに揺れた感情。
その問いに、美咲は何も答えられなかった。
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