君の鼓動を、もう一度

7.退院

美咲は退院の日を迎えた。
 体調が良くなったとはいえ、完全に元気を取り戻したわけではない。それでも、これ以上の入院生活には耐えられなかった。

 病室のベッドで最後のチェックを終え、医師からの説明を受けて、悠斗が静かに微笑みかけた。

 「退院、おめでとう。無理しないようにね。」

 「ありがとう、悠斗。少し休んだら、また元気に頑張るから。」

 美咲は明るく言ったが、その目の奥には、まだ不安と葛藤が潜んでいた。
 悠斗がどうしても心配しすぎるから、自分ができることをもっとやりたかった。そんな気持ちもあった。

 病室を出ると、翔太が待っていた。

 「おお、退院か!よかったな!やっと家でのんびりできるぞ!」

 翔太は笑顔でそう言うと、美咲に肩を抱いて歩き出した。

 「でも、これからは悠斗と一緒に住むんだよな?」

 「うん、両親が海外に行ってるし、悠斗が心配してくれるから。」

 翔太はその答えに頷きながら、美咲を見守った。



 美咲は悠斗の家で新たな生活を始めた。
 最初は少し気まずさを感じたが、次第にお互いの距離も縮まり、以前のように自然に会話を交わすようになった。

 悠斗は医者として忙しく、家を空けることが多かったが、美咲はそれでも家で過ごす時間を大切にしていた。
 そして、少しずつ体調も良くなり、日常の些細なことに喜びを感じるようになった。

 だが、心の中でずっと感じていた「今しかない」という思いが、日に日に強くなっていた。
 何もかもを先延ばしにしているわけにはいかないと思い、美咲はある決意を胸に秘めていた。
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