ふたりだけのオーキッド・ラグーン
 (うわぁ~素敵!)
 (信じられない! 入っちゃって、いいの?)

 そう、バスタブには波波と湯が張られているのだが、それだけではない。水面に花が浮いているのだ!
 浮いているのは 蘭の花。昼間にみていたガイドブックに載っていたのと同じピンク色の蘭の花がある。その数、たくさん。隅から隅まで、バスタブの水面を埋めていた。

 (バラ風呂の、オーキッド版?)
 (フラワーバスっていうものよね?)

 シンガポールの国花、バンダ・ミス・ジョアキムを使った演出に真紘は感激する。今日は朝から鎌田女史のプレゼントの胡蝶蘭からはじまって、夜には国花の花湯になるとは!
 
 (フラワーバスって、なかなかできない体験だよ)
 (しかも、バラでなくてシンガポールにちなんで蘭にするところが、凝っている!)
 (もう、瑠樹さんったら~、やることなすこと、全部素敵なんだから!)

 感激し過ぎて、真紘は涙が出てしまう。
 遠くにいってしまった瑠樹に会いたくて、離れている時間を短くしたくて、結婚式などのセレモニーはすべて省いた。結婚式でのおなじみのもの、フラワーシャワーとかライスシャワー、ブーケットトスにバージンロードなどのお嫁さんならではの特権を放棄した。結婚を夢見る女の子の夢を何ひとつ体験することなく このシンガポールにやってきた。それを慮っての瑠樹のサプライズだ。

 水面に揺れる蘭をみれば、気持ちが逸る。もうじっとしていられない。さっさと体を洗ってバスタブに身を沈めようとしたときであった。
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