ふたりだけのオーキッド・ラグーン
 たぷたぷと、バスタブの湯が揺れる。ふるふると、湯面の花も揺れる。

 「真紘、大丈夫? 今から俺も入るけど、いい?」

 (え?)
 (今から入るって?)

 洗い場で体を洗っている最中に、そんな夫の声がかかる。真紘が風呂に入っている間、瑠樹は食事の用意をしているのではなかったのか?

 「真紘?」
 「あ、はい! ま、待って、まだ終わってないから! さっさと入って出ますから、もうちょっと待って、ま、待ってください!」

 別に悪いことをしているわけではないのに、真紘のセリフは舌足らずだ。
 てっきりひとりで入浴を楽しむものと思っていたのに、瑠樹が入ってくるなんて! これこそ想定外というもので……

 「え~、何いってんだよ。別にいいじゃん、もう夫婦なんだから」
 「え、でも……」

 夫婦なんだからといわれてしまえば、簡単に「ダメです」といえない真紘がいる。すったもんだの末に夫婦となったから、それを否定するようなことはいえないのだ。
 真紘が返事を躊躇する間にも、バスルームの扉の向こう側では入浴の支度をする音がきこえる。女と違って男の脱衣は簡単なもので、華々しく扉を開けて瑠樹が登場したのだった。

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