ふたりだけのオーキッド・ラグーン
 (え、マジ!)
 (本当に入ってきたよ!)

 洗い場の真紘はちょうど体を洗っていたところ。ところどころに泡をのせた状態である。
 そんな真紘を見つけてしまえば、目を輝かせて瑠樹がいう。

 「せっかく一緒に入るから、背中を流してあげようと思うんだけど……」
 「いえ、いいです!  自分でできます!」
 「じゃあ、なら……髪、髪を洗ってあげよう」
 「それもいいです!  自分でできますから!」

 東京で短いながらも半同棲生活を送っていたとはいえ、瑠樹と一緒に風呂は入ったことはない。また同じベッドで眠っていても、はっきりと瑠樹の裸をみたことはない。真紘が恥ずかしがって、部屋の明かりを落としていたからだ。
 「夫婦だから」のひと言は、そんな真紘の恥じらいを枠外へ追いやってしまう。

 「なに、真紘、一緒に入るのは嫌なの?」

 戸惑う真紘の心理を、そう瑠樹が邪推する。
 瑠樹の裸から視線を外し、彼に背中を向けて真紘は弁解した。

 「あ、そうじゃなくて……そうじゃなくて、体、さっさと洗いますから!」
 「真紘、遠慮しなくていいぞ」

 明るい瑠樹の声がバスルームに響く。
 背中には、ほのかに瑠樹の存在を感じる。しどろもどろに答える真紘など意に介さず、彼は真紘のすぐ後ろにいた。手を伸ばせば、すぐに真紘を包み込める距離だ。
 同時に、夫は妻の手助けをしたくてしたくてたまらないという空気も醸し出していた。

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