ふたりだけのオーキッド・ラグーン
 そんな指摘をもらって、真紘は今までの自分の人生を振り返ってみる。
 思い起こせば、中高はずっと受験勉強ばっかりだったし、大学は大学でレポートで追われていて、就職したら就職したでやはり業務に追われて……

 ――今までできなかったこと。それは一体、何だろう? 

 また今さらながらに自分は一体何が好きだったのだろうかと、真紘は悩む。

 「仕事に集中していたから、それ以外のことになかなか頭は回らないわよね~。すぐには思い出せないのも無理ないわよ。ここは、片っ端から何でも手当たり次第でやってみるとか? 体を動かしてもいいし、絵画や音楽鑑賞をしてもいいし、単純に観光地巡りしてそれをブログに投稿してもいいし」

 真紘と違ってポンポンと鎌田女史はすぐにできそうなことを挙げていく。できる本社社員は、やはり違う。

 (そうね~、ブログね~)
 (記録にはいいかも)
 (あ! いや、それじゃなくて……)

 何か閃きそうな感じがする。でも、わかりそうでわからない。
 ここで時間がきて、鎌田女史はお暇となる。
 今回の訪問は、新婚旅行の途中で立ち寄ってくれたとのこと。新婚旅行ともなれば彼女のパートナーはどこにと思ったが、鎌田女史が真紘と会っている間、その旦那様は業務提携している大学のほうへ挨拶にいっているとのこと。

 「また遊びにくるわね。今度は子連れでお邪魔するかも」
 「え! お子さん?」
 「私ね、来年ぐらいに子供欲しいのよね~。できれば三人ほしいんだけど、そうするとあんまり悠長なこと、いってられないのよね~」

 くすくすと鎌田女史は笑いながらいう。ずいぶん話が飛躍するなと思うけど、彼女なら本当に子連れでやってきそうだ。
 じゃあねといって、鎌田女史は軽い足取りでパートナーの待つ待ち合わせ場所へいった。



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