一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 そう結論づけた私は、なんと言うべきかを考えあぐねて。
 暗い顔で押し黙った結果ーー。

「何言ってるんですかぁ~。カフェ宇多見の料理は全部、あたしが作ってます!」

 常連客と楽しそうに会話をしていたはずの妹を、呼び寄せてしまった……。

 先程まで私に笑顔を向けていたはずの関宮先輩は、嫌そうな表情とともに低い声で彼女に告げた。

「あんたには、聞いてない」
「あたしはこの店の、店主なんですけど! 文句があるなら、入店をお断りーー」

 その声音には、明らかに敵意があった。

 普段であれば、絶対に常連客の前では見せない。
 ムスッと不機嫌そうな顔をした妹は、すぐさま関宮先輩を出禁にしようと試みたが……。

「星奈さん。カツサンドとコーヒー。ブラックで」

 テーブルの上に置かれたメニュー表とにらめっこしていた彼は、当然のように妹の話を無視する。
 私の名前を呼んで、矢継ぎ早に注文を口にした。

 これは恐らく、大きな騒ぎになる前にこの場から離れられるよう、彼なりの配慮をした結果なのだろう。

「か、かしこまりました」

 私は慌てて紙に内容を書き記すと、頭を下げて厨房に引っ込んだ。
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