一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「なんで、お姉の名前を知ってんの……?」
「久しぶり、女狐。俺の星奈さんに、相変わらず面倒事を押しつけているんだって?」
「あ、あたしは世界で一番かわいい美少女よ!」
「自意識過剰すぎ」
「事実を伝えて、何が悪いの!?」

 関宮先輩と妹が楽しそうに会話をしている声を耳にしながら。
 私は心を殺して、カツを揚げる。

 パチパチと油が弾ける音がまるで線香花火のように感じるあたり、末期かもしれない。

 パチパチと弾けて、振動を与えた瞬間にボトリと地面に落ちる。

 手を伸ばした瞬間に、弾けて消えてしまう。
 それはまるで、彼に対する恋心のようでーー。

 卒業式が、最後だと思っていたのに。
 再び彼と関係を深めるチャンスがやってきた。
 それだけは絶対に、逃したくない。

 ーーそう、思いながらも。
 私なんかが彼と思いを通じ合わせる機会など、訪れるはずがないと。

 そんなネガティブな感情が混ざり合い、心の中は荒れ狂ってーーおかしくなりそうだった。
< 11 / 185 >

この作品をシェア

pagetop