一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「ねぇ。お姉の名前、どこで知ったの?」
一度目は無視。
「あたしを女狐なんて不名誉な呼び方をする人間は、一人しか知らないんだけど」
「お替り」
二度目は追加注文。
「もしかして、香月?」
「俺の名前を呼んでいいのは、星奈さんだけだ」
三度目はーー苛立った様子で吐き捨てた。
妹は関宮先輩からどんなに酷い対応をされても、何度も立ち向かっていく。
彼女は自身の接客と容姿に絶対的な自信を持っていた。
だからこそ、しつこくすればするほど自分の魅力が相手に伝わると、本気で信じているのだろう。
その法則が関宮先輩に当て嵌まらないのは、誰がどう見ても明らかだと言うのに……。
「えー!? 嘘!? 金髪の方が似合ってたのに!」
ーーその根性と非常識さを見習えたら。どれほどよかったか……。
私は誰も見ていないのをいいことに、深いため息をついた。
「陰のある高身長男子ってのも、悪くないわよね! ここで再会したのも、何かの縁! あたしの彼氏にしてあげる!」
「俺、彼女いるから」
妹は自信満々に言い放ったが、関宮先輩はきっぱりと陽日さんの交際を断る。