一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 行きたくないけど……。
 食事を終えたお客様を、放置しておくわけにはいかないし……。
 仕方、ないよね。

 私は憂鬱な気持ちでいっぱいになりながら厨房から出ると、渋々レジカウンターに立った。

「お待たせ、いたしました……。お会計は、1500円になります」

 暗い表情で事務的に声を発した私をじっと観察していた彼は、財布から現金をぴったり取り出しトレイの上に載せる。

 ーーこのままここに居座られたら、どうしようかと思った……。

 私はほっと一息つくと、さっさとレシートを発行するためにレジを操作したのだが……。

「今はまだ、付き合っていないけど」

 領収書を発行するよりも、関宮先輩が私に話しかけてくる方が早かった。
 彼は一体、何を告げるつもりなのだろう?

 今交際している彼女が、私達姉妹よりもかわいくてきれいな女性だと。
 自慢でもしたいのか。
 それとも、いずれ陽日さんと付き合うから。姉の私に許可を取りたいとでも提案するのかーー。

 どう転んでも。聞きたくないと、耳を塞ぎたくなるような内容でしかない。
 私は唇を噛み締め、どんな内容であっても泣かないと決めたのだが……。
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