一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「香月、先輩……っ」

 ーー幸せなひととき。

 身も心もとろけて、どうにかなってしまいそうだった。

「あ、信号……。青に、なりましたよ……?」

 信号が青に変わった瞬間に聞こえた鳥の囀りのような、一定のリズムを耳にした瞬間。
 それを一切気にする様子のない彼に、唇が離されたタイミングを見計らって告げる。

「ごめんね。そんな顔されたら、止まんない……」

 香月先輩は切なそうに瞳を細め、何かに耐えていたけれどーーポツリとそう呟いた直後。
 離れないように繋いでいた指先を勢いよく離し、私の身体を抱き上げた。

「ひゃ……っ」

 素っ頓狂な声を上げたせいか。

 何事かと通行人達が目を丸くする中。
 帰途を急ぐ夫に抱きかかえられ、私は顔を真っ赤にしながら自宅に戻った。

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