一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
『お姉のものはあたしのもの。あたしのものは、あたしのもの。当然でしょ?』

 悪びれもなくそう語る。
 あの子の言いなりになって、生きていくべきではなかったと。

 
 関宮 香月(せきみや かづき)先輩を遠ざけた私、宇多見 星奈(うたみ せな)はーーわがままな妹と決別するタイミングを、完全に失ってしまった。

 あれがきっと、最後の機会だったのだろう。

 私が彼に差し伸べられた救いの手を、掴み取れなかったせいで。
 大人になってもまだ、私はあの子の言いなりのまま。
 引き立て役として、空虚な毎日を生き続けている。

 だって、陽日さんは。
 たくさんの愛を一身に受け取るべき、優れた容姿と愛嬌を持つ……。
 太陽の光を受けて光輝くべき女性だから。

 それに比べて、私は……。
 地味で、なんの取柄もない。
 関宮先輩に好かれた理由がわからないくらい、平凡な人間だった。 

 25年間。どれほど酷い仕打ちを、受けたとしても。
 あの子のそばを、離れられなかったのは……。
 今さら関宮先輩に助けを求めたところで、見て見ぬ振りをされるだけだとわかっていたから。

 底なし沼から抜け出せない私は、誰にも言えない苦しみを抱え――今日も生きている。
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