一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ーー私はいつまで。
 こんな生活を、続けていればいいの……?

「お姉! オーダー!」
「うん……」

 このままではいけないと、わかっていても。
 妹のそばを離れて、新たな一歩を踏み出したところで。
 陽日さんはあの手この手で、私を連れ戻そうとするだろう。

 大騒ぎになって、誰かに迷惑をかけるくらいなら。

 ずっと妹の隣で、心を殺し。
 人前に出るのが大好きな彼女の影としてーー厨房に籠もり、フライパンを振っているべきなんだ……。

 そう結論づけた私は、陽日さんが受けたオーダーを確認し、慣れた手つきで頭の中に叩き込まれたレシピを再生しながら食事を作る。

 ーー料理は好きだった。

 食材を切って炒めている間は……。
 苦しいことやつらいことを、忘れられるから。

 たとえ私の存在が、なかったことにされていたとしても。

 こうして衣食住を保証されているだけでも、ありがたいと思わなければならない。
 私は生きているだけで、妹を苛立たせてしまう人間なのだから……。
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