一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
ーー期待してはいけない。
『君が好きだよ』
どれほど愛の言葉を囁かれたとしても。
それを真に受けたところで、あの子は絶対に彼を諦めないから。
『協力してよね!』
妹の言葉に従うべきだ。
そうしないと、どんな酷い目に遭うかわからない。
最悪の場合はもう二度と彼の前に姿を見せられぬほど、傷つく羽目になるだろう。
それだけは、絶対に嫌だから。
『俺の、彼女になってほしい』
お願いだから、私に交際を持ちかけないで。
今のままでも。充分すぎるくらいの幸せを、関宮先輩にもらえているから。
だから私は、これ以上彼を求めぬように。
関宮先輩に対する気持ちは、さっさと捨て去るべきだったのにーー。
「星奈さん。お疲れ」
いつまで経っても踏ん切りがつかない私に、自分の存在を刻みつけるように。
彼は二日に一度、定期的にカフェ宇多見へ顔を出すようになってしまった。
「お疲れ様、です……」
私が下を向き、あからさまに嫌そうな態度をとっても。
彼は気にする素振りすら見せなかった。