一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 まるで私に無視されることなく、返事をしてもらえただけでも嬉しくて仕方がないと言うように。
 声を上げて笑った彼は、こちらが誘導しなくても。
 定位置の二人がけテーブルに座りーー朝から晩まで、私の勤務風景を観察するのが日常となりつつあった。

「香月! またあたしへ会いに来てくれるなんて、すっごく嬉しい!」

 私と関宮先輩が、気まずい空気を流す中。
 妹の彼に対する猛烈アタックは続いているが……。
 その進歩は芳しくない。

「ほんと、目障り」
「もう! 釣れないんだからぁ~!」

 腕に纏わりつこうとする彼女を無言で払い除ける動作が、日を増すごとに手慣れてきた。
 その姿を見る限りでは、明らかに陽日さんには脈がない。

「そんなところも、大好きだけどね!」

 妹はそれを認めたくなくて、見て見ぬ振りをしているのだろうか。
 それともわかった上で、関宮先輩に迷惑をかけているのかーー。
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