一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「星奈さんが女狐の嫌がらせに負けず、必死に頑張っているところ」

 そんな関宮先輩の姿を見るたびに、心臓が破裂しそうなほどときめいて。
 彼を好きだと伝えたい気持ちが、大きくなる。

「早く俺を頼ってよ。助ける準備は、いつだってできてる」

 ーーこんなの、卑怯だ。

 彼は囚われのお姫様を救う騎士や王子様のように、私に甘い言葉を囁いてくれた。
 それがとても嬉しくて。
 今すぐにでも関宮先輩の胸元へ、飛び込んでいきたい気持ちでいっぱいになったけれどーー。

「お待たせしましたぁ! 陽日特性、スペシャルブレンドコーヒーでーす!」

 ーー私が幸せになるのは、許さないと言うように。
 二人の間に流れる甘い空気を引き裂く悪魔が、コーヒーカップを手に現れた。

「これを一口でも飲めば、香月も私が好きで溜まらなくなる魔法がーー」
「そう言うの、興味ない」
「せっかくあたしが、サービスしてあげてるのにー!」

 どれほど言い寄っても関宮先輩が靡かぬ現状に、妹も焦りを感じているのだろう。
 メイドカフェのような過剰なサービスを行った彼女は、ぷっくりと頬を剥れさせて怒った。
 そんな姿もかわいらしいと同性の自分でも感じるのだ。
 陽日さんに心を奪われた異性であれば、堪らないだろう。
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