一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「いつもおいしい料理をありがとう」
「どういたしまして～！」
「料理を作りながら接客まで、全部一人で担当するなんて……。陽日ちゃんは凄いね」
「これくらい、あたしにかかれば朝飯前です～！」

　常連客へ当然のように嘘をついた陽日は、満面の笑みを浮かべて会計を済ませた男性に手を振った。

「またのお越しを、お待ちしておりまーす！」

　ーーカフェ宇多見は美人店長がたった一人で料理や接客を提供し、切り盛りをしているお店だ。

　最近ではそうした評判が口コミで広がり、昼時ともなれば満席に近い客が押し寄せる。

『一人じゃ大変だから、お姉に手伝ってもらっているの！』

　嘘が発覚するのを恐れた陽日さんは、そんな言い訳を並べ立てて誤魔化していたがーー。

　両親が亡くなり、妹がこのカフェの経営を引き継いだ時から。
　私はずっとここで、料理を作り続けている。

　いないものとして扱われなくなった分だけ、まだマシだ。

　陽日さんはいかなる時も、自分が世界の中心にいなければ気がすまない。カフェ宇多見の女王様だった。
　私が下働きに徹していれば、あの子の機嫌を損ねずに済むはずだから……。
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