敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
授賞式当日。座席のない立食形式のパーティーで、ドレッシーなブラックスーツに身を包む誓野さんと、艶やかな紅色の着物を纏う私は正直浮いていた。

彼の立ち姿があまりに美しすぎたから。そして、彼が『お祖母様のお下がりなので気兼ねなくどうぞ』と言って貸してくれた着物が見るからに高級で艶やかだから。

人々の視線がまとわりついてくる。着てくる服と同伴者を間違えたなあと先行き不安になった。

「石楠花先生! お会いできて光栄です!」

そう言って半泣きで挨拶してくれたのは、今年北桜小説大賞を受賞した新人作家の津辻(つつじ)あかねさん、二十七歳。

……なるほど。石楠花のファンだから『ツツジ』ね。

石楠花はツツジ科の花である。私の名前にあやかって作家名をつけたのだろう、ファンらしい思考がかわいらしい。

「そんなに泣かないで。歳も近いんだし、仲良くしてくれると嬉しいわ」

そう言って先輩を演じながら涙目の彼女をなだめる。

私も湾先生の前ではこんな感じだったんだろうなあ、なんて己の過去を懐かしみながら。

「これからも一緒に頑張りましょう」

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