敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
そう声をかけると、彼女は感動して「ありがとうございます」と号泣しながら去っていった。そのうしろ姿を微笑ましい気持ちで見守る。

「……知っていたつもりではありますが、人前に出ると本当に豹変しますね、石楠花先生は」

誓野さんが担当者モードでこっそり囁きかけてきたので、本音でぼやく。

「もう疲れちゃいました。湾先生にもご挨拶できたし、帰ってもいいですか?」

「もう少し我慢してください。このあとの役員の挨拶が終われば一段落しますので」

ひっきりなしに会社関係者や編集者、作家、クリエイターが話しかけてくる。

私はもちろん、隣にいる誓野さんも経営陣や関連企業の役員から大人気のようで人が絶えない。

この授賞式は文芸編集部を主体に執り行われているため、社長の息子である誓野さんとはいえ出席するのは二度目だそうだ。

彼の顔はまだそこまで知られていない。が、知っている人間は話しかけてくるし、知らない人間もそのビジュアルの美麗さから興味本位で寄ってくる。

かといって私のお守りがある以上、そちらの対応に専念するわけにもいかず、周りをあしらいつつもこちらに気を配り続けていて大変そうだ。

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