敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
PCの前に座っていた時間だけ見れば、これまでの作品よりずっと長いかもしれない。

「なにしろ、恋愛ものは初ですので。今までとは手ごたえが違うと言いますか……」

私が書こうとしているのは、大正時代の華族令嬢と、その奉公人の身分差恋愛物語。

得意の歴史ものとはいえ、恋愛に主軸を置いた話は初めてだから、すんなりといかないのは当然。

人の生死をドラマティックに描くことで評価されてきた私が、人が死なない、尊王攘夷も起こらない、こんな穏やかな世界線でどうやって起承転結を描けばいいのかわからない。

誓野さんは私のリアクションから察したのか、申し訳なさそうな表情をした。

「重厚な歴史小説専門の石楠花先生に恋愛ものをお願いするなんて、無茶を言って申し訳ありません」

「それは……仕方がありません。スポンサーたっての希望ですから」

話は北桜グループが経営する映画製作会社から始まった。

キャッチーな恋愛をテーマに、人気作家と人気俳優を使って大々的に撮ろう!とスポンサーが猛プッシュしたのだ。

すでに俳優のスケジュールまで押さえ済み。スポンサーが首を長くして待っている。プレッシャーがえぐい。

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