敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
だから社長の声かけもわかりやすく社交辞令だったのか。

「それにしても、翠さんが父と会食をしていたなんて知らなかったな……」

少々不満そうに漏らす彼。社長が作家と食事をするのは珍しいから驚くのも無理はない。

「ヒット作を出すと社長に労ってもらえるんだそうです」

「……そのとき俺を呼んでくれれば、こんなまどろっこしいやり方で近づかなくても……」

「はい? なにか言いました?」

「ああ、いえ。こちらの話です」

早口でよく聞き取れなかったが、まあいいか。私は再びソファにぐったりと蕩けるようにもたれた。

「誓野さんもだらんとした方がいいですよ。神宮司先生に絡まれて疲れたでしょう?」

「俺は翠さんを見ているだけで疲れが吹き飛びます」

「あははーそんなわけないじゃありませんか」

「本当ですよ」

そう言ってゆるゆると微笑んでいる誓野さん。まったく不思議な人だ。

「今日はゆっくり休んでくださいね、翠さん。今は原稿の返却待ちでしょう?」

「私にとっては休む方が苦痛なんです。吉川さんに執筆バカって言われるくらいですから。そろそろ次回作の検討にも入らなくちゃ」

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