敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
もっとずっと、この時間が続くと思っていた。二作、三作と、ふたりで作る物語が増えていくものだと。

お別れかあ……。

しかし、ふとかつての彼の言葉を思い出し、「あ」という呟きが漏れる。

『いつか俺が担当を外れて、ひとりの男としてあなたの前に立てるようになったら――』

じわりと体温が上昇し、頬が熱くなってきた。

……いやいやいや。その約束を誓野さんが覚えているかもわからないし。

雰囲気に流されてぽろっと言っちゃっただけで、深い意図もなかったかもしれない。あんな曖昧な言葉に期待するのはよくない。

「翠さん?」

怪訝な顔をされ、咄嗟に「ああ、いえ、なんでもないんです。寂しいなあ、なんて」とまくし立ててごまかす。

「次はどんな方が担当になるんでしょうね。うまくやっていけるといいんですが……」

またゼロから関係を築いていくのが少し怖い。吉川さんや誓野さんみたいに信頼できる人だといいんだけど……。

胸の前で手をきゅっと握りしめると、誓野さんが私の不安を拭うようににっこりと笑った。

「それについては明日。詳しく説明させてもらいます。大丈夫、翠さんもよくご存じの方ですよ」

「ご存じ……?」

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