敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
目測だから完全一致とはいかないけれど、それでも写真の女性と私では身長差が十センチ近くありそうだ。

「つか、石楠花みどりがそんなに気になるんなら、番号教えるけど?」

男性がスマホを取り出して操作する。

そんなに簡単に他人の電話番号を教えていいの……? 顔を見合わせる私たちに向けて、男性が悪態をつく。

「あの女、俺を一生応援するなんて調子のいいこと言いながら、あっさり別の店の男に乗り換えやがったんだ。もうどうなっても知らねえわ」

なるほど、この男性は偽者の石楠花みどりを、今は良く思っていないんだ。

ひとまず番号のメモだけ取らせてもらって、私たちは彼と別れた。

「それにしても、よくホストさんから話が聞けましたね」

誓野さんの自宅までの帰り道。助手席に座った私は、運転席の彼に向けて話しかける。

まず男性を見つけたことがすごいし、協力してもらえたのも奇跡だと思う。

「知人の知人の知人にホストクラブに顔の利く人がいてね」

「ちょっと遠いですね」

「それくらい遠くないと、さすがに歓楽街のドンには辿り着けなかったな」

歓楽街のドン……!? なんてパワーワード。シナリオ一本書けそうだ。

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