敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「そんな感じで伝手を辿って紹介してもらったんだ。ホストの彼、別の店に転職したいらしくて、いいところを斡旋するって条件付きで話を聞かせてもらったよ」

まさか裏取引があったとは。そんな条件を出せるところもさすがである。

「でも、番号を聞き出したところでどうするんです?」

電話をしてみたところで、その女性が話に応じてくれるかはわからない。下手をすれば着信拒否されておしまいだ。

しかし、誓野さんは作戦があるのか、穏やかに微笑んでいる。

「大丈夫、あとは俺に任せて。翠さんは次回作の企画書に集中してほしい」

ハンドルを握りながらニッと頼もしい笑みを浮かべた。

あの記事が発売されてから何度も不安に押し潰されそうになったが、彼のその顔を見る度に大丈夫だと思えてくる。

「新作、ちゃんと発売できるでしょうか? 映画化の話、なくなったりしていませんか?」

「今はどこも様子見。でも問題ないよ。みんな翠さんを信じているし、俺が必ずなんとかするから」

信号の合間、こちらに手を伸ばし私の頭の上にポンと置く。

「だから翠さんは好きなことだけ――輝けることだけしてて」

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