敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
頭を優しく撫でられ甘やかされているのを感じながら、彼に守ってもらえる自分はなんて幸せ者なのだろうと思った。

「わかりました。私は私のできることをします」

そう約束し、彼の家に戻った私は企画書を開いてキーボードを猛パンチングした。

「もしかしたら作家生命終りかも」なんて弱気になっていた私だけれど、彼を信じて前を向き続けるしかない、そう覚悟が決まった。



その日の夜。誓野さんが私の部屋にお茶を運んできてくれた。

「翠さん。これ、どうぞ」

差し出されたのはガラスのティーポット。ポットの中には黄色い花が咲いていて、お茶の中で花びらがゆらゆら揺らめいていた。

「わあ! 工芸茶ですね。綺麗」

「中の黄色い花はキンセンカだそうだよ」

「ありがとうございます。私が喜ぶものをたくさん探してきてくれて」

昨日はケーキを、一昨日はリラックスできるというお香を買ってきてくれた。

ただでさえ忙しいのに、彼は毎日毎日私のために奔走してくれる。

「担当の鑑ですね」

「ありがとう。……って、そう言ってもらえるのは嬉しいんだけど」

誓野さんがはにかんで目を伏せる。

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