敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
私は立ち上がり引き伸ばした等身大のそれに並ぶ。比べると、身長や骨格が明らかに別人だとわかってもらえるはずだ。

「ご覧の通り、この写真に映る人物は石楠花みどり先生ではございません。また、先生がこの写真のホストクラブに足を運んだ事実もありません。その証拠として、こちらの資料をご覧ください」

事前に配布した資料とモニターの映像をもとに誓野さんが説明する。

まず一点目、写真の女性と私の身体的特徴が違うこと。

そして二点目、この写真が撮影された十一月二十九日、私は県外にいたと編集部の人間が証言できること。

そして一番の証拠は――。

「写真の現場にいた男性が証言してくださいました。『この女性は石楠花みどりではない』と」

背後のモニターに映し出されたのは、先日お会いしたホストの彼だ。

あの日とは別の日に聴き取りした内容を録画したようで、私も初めて見るその映像に息を呑む。

『写真の女性はなんと名乗りましたか?』

誓野さんの質問に彼が答える。

『自分のことをベストセラー作家の石楠花みどりだって言ってました』

『周囲は信じましたか?』

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